理論生物学

セミナーを企画しました。

日時:2019年7月1日(月)14:50-16:20
場所:高知大学物部キャンパス 3-1-13教室
講師:加藤元海(高知大学理学部)
演題:理論生物学研究室で行なわれている研究

理論生物学とは、狭義では、生命科学や生物学における現象を主に数学などを用いて数理的に研究することです。高知大学の理論生物学研究室では、野外の生き物を対象に、なぜそのような行動をとるのか、なぜそのような生態なのかを「考える」ことも広義の意味として研究対象としています。実際に研究室所属の学生は、自然豊かな高知で見られる様々な動物の生態について野外調査をとおして研究しています。理論生物学研究室の長所であり短所である特徴は、測定などを行なう機械や道具が一切研究室にないことです。機器や道具がないので、思うように生物を調べることができません(短所)。しかし、特殊な機械や道具がないことから、対象生物が縛られることはありません(長所)。ただ、たいていの生物は、「工夫」すれば何らかのデータが取れます。これまでの卒業研究や大学院の研究で行なわれた研究は、高知のさまざまな生息場所(山・川・海)に加え、さまざまな分類群、大きさにわたる動物(ヒトを含む)が対象となっています。哺乳類では、コウモリ、カワウソ、タヌキ、キツネ、ヤギ、ニホンザル、ヒト、クジラ;鳥類では、山奥に生息する鳥、フラミンゴ;爬虫両生類では、ヤモリ、カエル、サンショウウオ;魚類では、マンボウ、ジンベエザメ;無脊椎動物では、水生昆虫、サワガニ、プラナリア、ザトウムシ、クモ、マダニ(タヌキの外部寄生虫)、回虫(タヌキの内部寄生虫);その他の項目としては、底生藻類、昆虫食、タヌキの脂が学生たちの研究対象となっています。

熱帯低湿地林

セミナーを企画しました。

日時:2019年6月17日(月)14:50-16:20
場所:高知大学物部キャンパス 3-1-13教室
講師:嶋村鉄也(愛媛大学農学研究科)
演題:熱帯低湿地林を観る

熱帯の低湿地では、水が溜まりやすい場所で植物遺体の分解がある段階で抑えられ、泥炭が堆積し熱帯泥炭湿地林とよばれる特異な景観が発達することがある。泥炭といっても日本の釧路や尾瀬の泥炭はミズゴケ由来のものであるが、熱帯泥炭の場合は木質化した植物遺体由来のものとなっている。この泥炭は厚さが最大で20~30m程になり、ドーム状の地形を形成する。このドームの上では泥炭の厚さにしたがって、4-5種類の異なる植物群落が発達し、多様な植物が生育することが知られている。本セミナーでは、この泥炭湿地林の成り立ちや特異性について、植物群集動態や物質循環に関する研究を踏まえながら概説する。次に、この泥炭地を巡る世界的な状況について説明をし、現在行っている研究プロジェクトについて簡潔に紹介する。

ナス

高知県プロジェクト「”IoP (Internet of Plants)”が導く「Next次世代型施設園芸農業」への進化」に関連して、芸西村のナス工場、安芸市のピーマン工場を見学しました。

ビワコカタカイガラモドキ

日本を含む東アジア原産で、近年になってアメリカ・ルイジアナ州に侵入したビワコカタカイガラモドキNipponaclerda biwakoensisに関して、アメリカ合衆国農務省等の研究者と共同研究を始めました。特に、原産地に生息する寄生蜂などの天敵が侵入先の害虫個体群の安定・低密度化に果たす役割について調査を進めています。


精子経済理論

セミナーを企画しました。

日時:2019年6月8日(土)14:50-16:20
場所:高知大学 物部キャンパス1-1-13教室
講師:安部 淳(明治学院大学・教養)
演題:精子の数をめぐる雌雄間の攻防:精子経済理論とその実証

要旨:
雌の交尾頻度に関する問題と雄の精子競争にともなう精子分配の問題は、それぞれ理論と実証の両面から精力的に研究されてきた。しかし、これら雌雄の配偶戦略は、交尾時に授受する精子数をめぐり、お互いに影響し合って進化すると考えられる。そこで、これまで独立にとらえられていた雌の交尾頻度と雄の精子分配が、共進化する状況を理論的に解析した。その結果、集団全体で精子量が制限されやすい状況では、雄は交尾相手の数を稼ぐため交尾当りの射精量を小出しにし、雌は十分な精子量を確保するため複数回交尾する状況が進化的に安定になると予測された。集団全体の精子量は、例えば集団性比が雌に偏るほど制限されると考えられる。母親の性比調節により性比が雌に偏る寄生バチや、共生細菌の影響で性比が雌に偏るチョウやテントウムシの仲間について、現在行っている実証研究についても紹介する。


精子経済理論によると、集団の性比が雌に偏ると雄の射精量の小出しと雌の複数回交尾が予測される。写真は寄生バチMelittobia australicaの雄(中央のオレンジ色の個体)と雌(周囲の黒い個体)。Abe & Kamimura (2015; American Naturalist) から転用